ストーリーを創るにあたり、思い出はどのように廃棄されたモノに
どのようにつながっているのかについて話し合いました。
結局のところ、これは「喪失」をテーマにした物語です。
『ムーム』は、人間が捨てたモノに宿っている「思い出」が存在する不思議な世界が舞台。モノに宿った「思い出」は、準備ができるとモノから解き放たれる。主人公のムームは解き放たれず、この世界に留まっている「思い出」のキャラクターだ。ある日、ムームは同じようにモノから解き放たれない「思い出」の女の子に出会う。その新しい友達に、この不思議な世界について手ほどきしていくうちに、ムームは次第に自分を助けられるのはその女の子かもしれないと気づく。
『ムーム』は、映画プロデューサー・川村元気氏と、イラストレーター・益子悠紀氏による同タイトルの絵本が原作である。原作者の川村氏は、堤大介とロバート・コンドウに短編映画『ムーム』の監督を依頼し、トンコハウスならではの『ムーム』を創作することを奨励してくれた。本作のプロデューサーが、日本で優秀な製作チームを形成し、トンコハウスがクリエイティブの指揮をとりつつ、アメリカと日本のアニメーション文化から双方が学び合う形で映画制作の舞台が整った。
トンコハウスは、クラフターとマーザ・アニメーションプラネットという日本のアニメーションスタジオ2社と共同で『ムーム』の制作にあたった。パートナーのプロダクションにおける経験もそれぞれ異なれば、予算やスケジュール、アプローチの仕方も違うため、3社間での共同制作は大きな挑戦であった。しかしながら、連日開かれた日米間の通信会議で意見を交わしていくうちに、トンコハウスのクリエイティブ・ビジョンを世界レベルの職人技を持つ日本の制作スタジオが作り上げるという目標へと、チームを導くことができた。
トンコハウスは、日本のクリエーターと積極的にコラボレーションして、世界がまだ目にしたことがないような新しいものを作りたいと考えてきました。『ムーム』はその第一歩だったのです。